What is Tenya Fishing?

        
 テンヤのイラストをクリックすると鴨居のテンヤ道具図解が表示されます。(2006年5月 イラストバージョンアップしました
  印刷用PDFファイルもあります!(ここをクリック)

○伝統釣法 横須賀鴨居のマダイテンヤ釣り

 かつて、徳川家への献上鯛の供給基地として栄えたと言われる神奈川県横須賀市鴨居の港で、往事の釣法を原型として現在に引き継がれる釣法です。まずは上記「真鯛テンヤ」のイラストをクリックして仕掛けをご覧下さい。

横須賀鴨居周辺の小釣り漁師さんにより、根強くその釣法が守られているテンヤ釣り。一般に「タテ釣り」といわれている釣法です。この釣りは、テトロンモノフィラメントの編み糸、または単線のラーヂ等のミチイトを使った手釣りによるマダイ一本釣りの方法です。

餌は東京湾で取れる天然のサルエビ。餌の大きさは5センチから7センチ程度のものを使用します。マダイテンヤと言われる軸の長い鈎のチモトに大きな円錐台型の鉛を噛ませた道具(上記イラスト参照)に餌のサルエビを刺して海底まで下ろします。潮が速いと、テンヤが底に着いた感触がなかなかわからないのですが、夏から初秋に掛けての時季ですと狙う釣り場の水深が20〜30m前後と浅いので、初めてでも意外と簡単に「底」がわかります。

底に着いたテンヤを、50センチから70センチ間隔(これを一手、二手と数えます)で上へ上へと4〜5メートルぐらい、素早くリズミカルに手繰り、再び同じような間隔で少しずつ、底へ向かって下ろしてやります。そして再びテンヤが底に着いたら、また同じように一手・二手・・・と手繰る。また下ろす。この動作でエビが泳ぐ様を演出するのです。

もし、この上げ下ろしの操作中に指先に「おかしいな?」と、何か違和感を感じたら、“とにかく躊躇せず”ミチイトに重量を感じるところまで思いっきり高速で手繰ります。手繰っている途中で重みを感じたらここでさらに2手・3手と締め込むように強く手繰り、魚の口にしっかりと鈎を掛けてやります。これがいわゆる「アワセ」の動作です。こうして運良く魚が掛かったら、あとはやりとりを楽しみながら、動作に段をつけたり、船の揺れで仕掛けの張りが緩まないようにして、落ち着いて手繰っていきます。

水面を覗き込んで、その魚が鯛だったら、なんとも言えないうれしさがこみ上げてきます(^^)。
  

○円錐台型の鉛=「テンヤ錘」
テンヤ錘の特徴は、円錐台型をした鉛で出来た錘です。裾広がりで頭は細く、水中に沈んで行くときには裾広がりの底面側から沈みます。なんでテンヤって言うんだろうか? 理由は知りません(^^;) 。 共通するのは、〜〜テンヤと名の付くものは、細くなった錘の頂部付近に鈎を通して、その反対側にチモトを結んで、ハリスを結ぶという形状。例えば、スミイカテンヤならば羽子板状の細長い竹を噛ませて、その竹の板の先端に二本のカエシのない鈎がつきます。イイダコテンヤも原理は同じで、大きさが小さいだけ。カレイテンヤは頂部の穴に二股になった燐青銅のワイヤを通して、それぞれの先端にハリス・鈎を着けます。いずれもシャクッたり、小突いたり、通常は何らかの誘いの動作を釣り人が演出して使われます。

 

マダイテンヤも色々

マダイテンヤも随分と色々あります。関東周辺で使われているマダイテンヤのうちの一部をご紹介します。テンヤバリエーションのイラストを併せてご覧下さい。

@三浦半島鴨居・走水周辺の乗合船で使用されている2号豆テンヤ

A内房上総湊・竹岡周辺のシャクリ釣りで使用されている通称ブランコテンヤ

B相模湾腰越・或いは鴨居の一部の船が使用しているブラクリ

C三浦半島鴨居周辺の職漁師が使用しているテンヤ釣り用の大型テンヤ

D房総半島州の崎のシャクリ釣りで使用されているテンヤ

Eビシマ釣り用のカブラ

  


○「タテ釣り? ここらじゃテンヤ釣りって言うよ」とは船長の談

 タテ釣りというのは、鯛を狙うときの仕掛けの状態を指して称されたもので、大まかに言いますと一番下に重い錘をつけて着底させて、仕掛け全体を海中に立てて釣ることから「立て釣り」というそうです。従って、三浦半島鴨居の「テンヤ釣り」も、外房大原のビシマ釣りも、紀州加太の胴付き仕掛けも、基本的には「タテ釣り」に属します。

 これに対して、千葉竹岡・房総半島州の崎の手バネ竿を使ったシャクリ釣りは、どちらかというと潮の流れに乗せて釣る「フカセ釣り」に近いと言えます。ただし、州の崎のシャクリ釣りに使用されるテンヤまたはカブラの重量は8号前後と重く、タチ(水深)の浅い所で潮の緩い日だとテンヤが着低するのがはっきりわかるそうですから、タテ釣りに近いものがあります。
 また、最近乗合船でエビ鯛船を出船している金沢八景の野毛屋さんでは、15〜18号のテンヤにハリスを結び、中錘を使用しないで短いリール竿に繋いで狙う「一つ錘」方式のリールシャクリ釣法をされています。これもある意味、タテ釣りに属すると言えます。
最近、関東では鴨居のテンヤ釣りを指してタテ釣りと言うのが一般的のようですが、地元の漁師さん曰く「ここらじゃタテ釣りなんて言わねえべ」とおっしゃいます。道具の名前がテンヤ道具、そしてその道具を使った釣り方を「テンヤ釣り」とおっしゃいます。

死んだエビでも鮮度が良ければあたる!
 「海老で鯛を釣る」、広く言われることわざですね。釣り人の気持ちとしては、どうせならば活きの良い海老を餌に!と、思いがちなのですが、地域・季節によっては活きた海老が入手出来ないことも多々あります。そんなときには冷凍の海老を餌に釣ることがあります。ところがこの冷凍海老がバカに出来ないのです。鴨居の乗合船で使用される鋳込み天秤30号の先に2号豆テンヤの仕掛けで狙う釣りでは、あまり積極的に「誘う」という動作はしませんが、それでも30秒前後に1度程度の割合で、棚の取り直しのために何度か鋳込み天秤を着底させてはまたハリス分+α上げるという動作を行い、結局はそれが誘いになっているようです。「死んだ海老でも鯛は食うよ!」とは、鴨居大室港房丸の高橋房夫船長の談。おっしゃるとおりで冷凍海老にも鯛はよく食って来ます

 ちなみに、2006年5月25日、過去最高記録となった鯛を食わせた時の餌は、びしまぐるいさんが仕入れてきてくれた冷パン(餌用のサルエビ冷凍物の通称)でした。


             

              

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